Changan Automobile社のプレス工場における異常検出 プレス工場で異常検出機能を使用することにより、問題が早期に特定され、予知保全策を開始することができるようになります。これによってダウンタイムの最小化と品質の確保を実現することができます。
お客様情報
Changan Automobile社
Changan Automobile Co, Ltd.社は、中国重慶市江北区に本社を構える中国の自動車メーカーです。CHANGAN Automobile社は中国の4大自動車メーカーグループのひとつで、自動車製造における40年の経験を誇ります。同社は世界中に12の製造拠点と22の工場を有しています。
課題
効率的で省資源な製造
自動車メーカーは世界規模の競争により多大な圧力にさらされているため、製造効率を向上させるための方法を常に模索しています。同時に、自動車メーカーはその他の産業に対して道を開拓するイノベーションの担い手ともみなされています。したがって、自動車メーカーはAll Electric Societyの文脈におけるネットゼロ工場の実現に向けた多大な社会的および政治的期待に直面しています。自動車の製造プロセスは、自動車部品のプレスから始まります。ここでは、金属プレートを特殊な型にプレスしてさまざまな自動車部品を製造します。その後、部品が後続段階において組み立てられ、自動車が完成します。つまり、プレス工程は自動車メーカーのバリューチェーンにおける決定的かつエネルギー集中型の手順なのです。この工程は最終製品の品質の基礎を形成するものである一方、故障や遅延があった場合は製造工程全体にわたって大きな影響を及ぼし、ひいては自動車の製造コストにも影響します。
ソリューション
フレームワークとExecutionおよびCreationのソフトウェアツールにより、MLnextの製品ラインアップは最適な機械学習ソリューションを提供します。このソリューションは、PLCnext Storeから直接ダウンロードが可能です。
機械学習により既存工場が完全にデジタル化された製造施設に変貌
中国の4大自動車メーカーの一角を担うChangan Automobile(長安汽車)社は、プレス工程の重要性を考慮し、プレス工場における電気モータの異常検出用ソリューションについて研究を進めていました。「Digital Factory now(今すぐデジタルファクトリー)」を掲げたフエニックス・コンタクトは、ブラウンフィールドやグリーンフィールドの工場のデジタル化に向けた包括的なラインアップの製品、ソリューション、コンセプト、サービスを提供し、省資源で競争力のあるデジタル化された製造施設を構築することができます。製品ラインアップの核となるのはMLnextで、MLnext CreationおよびMLnext Executionのソフトウェアソリューションで構成されます。MLnextはデジタルファクトリーにおける機械学習(ML)の簡単で効果的な使用を促進します。異常検出機能を使うことによって、Changan社はモータの問題を早期に発見して予知的な措置を講じることができるようになり、ダウンタイムの最小化と品質の確保を実現しています。
オープンなモジュール型構造を採用しているため、柔軟かつ無制限にOT、IT、クラウドの接続を行うことができます。
すべてのモータデータの集中収集とデータベースへの保管
あらゆる機械学習プロジェクトにおける最初にして最も重要な手順は、データベースの作成です。Changan社では、それぞれに4台のプレスと設置済み電気モータを備えた2つの製造ラインから各プレス工場についてのデータを取得しました。ここで、デジタルファクトリーのもう1つの製品、IIoT frameworkを使用します。これには、OT(オペレーショナルテクノロジ、製造レベル)とIT(情報テクノロジ)をつなぐ拡張可能でオープンかつ柔軟なインターフェースが必要となります。異機種環境のOTの世界において設置された各種センサからのデータは、PROFINET、MQTT、Modbusなどの伝送プロトコル用のINコネクタを介して収集できます。その後、このデータはMySQLやInfluxDBなどのOUTコネクタを使って継続的に保管するか、Proficloud.io、AWS、Azureなどのクラウド上のスペースに保管することが可能です。このようにして、データはあらゆるレベルにおいて常時比較可能な形式で利用できる状態となっています。
Changan社はフエニックス・コンタクトのEMpro製品シリーズのエネルギー計測ユニットを使用して、モータの電気的パラメータを記録しています。例えば、モータの消費電流や電力はModbus/TCPインターフェースを介して記録・転送が行われます。複合センサは温度や振動も計測し、PROFINET IO-Linkを介して通信も行います。これによって、EPC 1522シリーズのエッジPCで実行されるIIoT frameworkが、すべてのモータのデータを集中的に収集し、データベースに保管できるようになります。最初のデータベースは1か月後に利用可能になりました。
MLnext Creationインターフェースは、直感的に分かりやすく整理されているため、プログラミングや専門的な知識がなくても機械学習を実装することができます。
プログラミングの知識なしでMLモデルを簡単にトレーニング
このデータベースは初期機械学習モデルの生成に使用されました。MLnext Creationソフトウェアツールは、直感的に分かるユーザーインターフェースにより、プログラミングや統計学の知識がなくても機械学習モデルをトレーニングすることができます。ユーザーはステップごとにプロセスを案内されます。Changan社のプロジェクトでは、記録されたデータがMLnext Creationにインポートされ、「Anomaly Detection(異常検出)」アプリケーションが選定されました。最後に、ハイパーパラメータ検索の複雑性が選定されました。これによって、最適なモデルが見つかるまでにトレーニングおよび相互比較を行うモデルの数が決まります。ここで最も重要となるのが、利用可能な計算時間と計算能力です。データの事前処理などのその後の手順はすべてバックグラウンドで行われます。
MLnext Creationで作成するモデルは、自動エンコーダの形式のニューラルネットワークです。目的は入力データの圧縮と、圧縮データを再構成する際に最も重要な特徴だけになるようデータを絞り込むことです。異常検出に関しては、自動エンコーダはモータの通常作動データによってトレーニングされます。トレーニング後に入力データに異常が検出された場合、自動エンコーダでは再構成することはできません。これによって入力データと復旧データに大きな相違が生まれるため、異常が特定できるのです。
ビジュアライゼーションソフトウェアGrafanaは、最重要情報の概要を提供するターゲットグループ別のダッシュボードの作成に使用することができます。
修正可能なダッシュボードのターゲットグループ別作成
次の段階では、製造環境におけるトレーニング済みモデルが使用されます。このため、MLnext Executionはデータ取得から事前処理、モデルとのインターフェース、イベントの保管にいたるまでのプロセス全体を網羅した完全にコンフィグレーション可能なパイプラインを提供します。MLnext Executionの特長は、プログラミングの知識が不要で、コンフィグレーションファイルにおいてすべてを設定できることです。長安汽車のプロジェクトでは、IIoT frameworkを実行しているのと同じEPC 1522エッジPCでMLnext Executionを実行しました。これによって既存インフラへのシームレスな統合が可能となりました。モータによって記録されたデータは、ほぼリアルタイムでデータベースからロードされ、モデルトレーニングの間と同じ事前処理が施されます。その後、異常検知のためモデルがデータを分析し、結果(時間、トリガーなど)をデータベースに戻して保管します。
データとモデルの結果の表示には、使いやすいGrafanaツールが使用されます。Grafanaは、モータの操作データの概要と検出された異常を提供するターゲットグループ別のダッシュボードの作成に使用することができます。また、Grafanaにより、Changan社は後日ダッシュボードを個別に修正することもできるようになりました。さらに、メンテナンス要員が潜在的な問題を認識できるよう、特定の異常に対するアラートを設定することも可能です。
特長
- 総合的なアプローチ:データの収集から保管、評価まで
- 効率の向上:データ分析によりダウンタイムとメンテナンス作業が減少
- 機械学習の専門知識不要:MLnextは専門知識なしでの機械学習の使用を促進するため、製造時のアクセスも使用も簡単
- 適用可能性:異なる製造環境でも使用できるよう、ソリューションは時系列データによりさまざまなアプリケーションに柔軟に適用可能
ポイント
Changan Automobile社のプレス工場において異常検出にMLnextを使った結果、潜在的な問題が早期に特定でき、ダウンタイムの最小化と競争力の向上が達成できることが示されました。機械学習の反復プロセスにより、検出した異常の評価を行うことでモデルを継続的に改良できるため、異常検出の精度も向上します。