オープンオートメーションで電化された将来に対応 Audi社は、ドイツ・インゴルシュタット(Ingolstadt)の拠点において、電気自動車Audi Q6 e-tronシリーズの車体部門用に、フエニックス・コンタクトのPLCnext Technologyを利用しています。IIoTアプリケーション向けの多数の機能に加えて、このオープンなエコシステムは国際規格IEC 62443-4-2に準拠した統合サイバーセキュリティを備えています。

プロジェクトについて話し合うAudi社の従業員とJan Diestelkamp

初期の状況


工場で話し合うAUDI PPE社とフエニックス・コンタクトの従業員

ともに協力して未来へ

フエニックス・コンタクトは電化、ネットワーク化、オートメーションの主要テクノロジを提供することにより、持続可能性の向上を支援しています。PLCnext Technologyはこうしたテクノロジの1つです。オープンエコシステムはセンサからクラウドまで、多数のインターフェースを擁しています。これによって、カーボンニュートラルな製造における絶え間ない情報の流れを実現します。PLCnext Technologyは、IEC 61131-3準拠のPLCシステムの標準プログラミングに加えて、C/C++、C#、Matlab Simulinkなどの高級言語も併用できます。PLCnext Control のコントローラ製品シリーズは、リアルタイムに両方の言語を組み合せて実行することができます。つまり、ITとOTのスペシャリストの専門知識を製造において活用できるのです。したがって、このエコシステムはAudi社製造施設のオートメーションへの移行にも貢献しています。

ソリューション


制御盤に組み込まれたエネルギー計測ユニット

多機能エネルギー計測ユニットEEM-MA 370などのエネルギーメーターが消費データを記録

最適化された製造プロセスにより温室ガスのバランスを改善

車両製造段階から、エネルギーフットプリントを可能な限りニュートラルに保つことが重要です。このためAUDI社は、2025年までに全拠点でカーボンニュートラルを達成するという目標を設定しました。この目標は、2024初頭に、インゴルシュタット(Ingolstadt)の拠点において達成されました。特に車体部門では、品質、可用性、適用性などの影響要因を通じて排出値を改善させることが重要です。無負荷の場合、あるいは車体が製造プロセスにおいて不合格となった場合、発生するのはコストだけではありません。製造関連のGHGバランスが増大します。

これを防止するため、AUDI社は無負荷時間中の停止や、フエニックス・コンタクトのEEM-MA 370計測ユニットなどの通信対応エネルギーメーターを利用した消費の監視など、多くの対策を講じています。ここでさらに最適化を進めるには、不具合が発生した場合に直ちにエネルギー流や情報についての透明性が確保される必要があります。品質に対し早期に示されるわずかな逸脱でも、ここでは決定的役割を果たす可能性があります。プロセスフローにおけるさらなる改善の可能性を特定することは、サイクル時間の短縮だけでなく、各車体のエネルギーバランスの最適化にも貢献します。

フエニックス・コンタクトのセーフティコントローラRFC470-Sを備えた制御盤

RFC 4072S PLCnext Controlは、機能安全なシステムオートメーションに加えて、包括的な診断機能を提供します。

高級言語を併用

車体部門のオートメーションソリューションの中核を担うのが、RFC 4072S安全関連コントローラです。最も重要な機能は、機能安全を付与した方法で車両が製造されるのを確保することです。RFC 4072Sは、システムオートメーションに加えて、通信に関連するデータとすべてのプロセスの包括的な診断機能を装備しています。一般的に製造プロセスで好んで使用されるIEC 61131-3のプログラミング言語は、すでに述べたように、リアルタイムなコンテキストにおける複雑なアプリケーションに適したC/C++やC#といった高級言語を使用することで補足されます。

オペレータ制御ステーションの前のAUDI社とフエニックス・コンタクトの従業員

操作ディスプレイの98%を表示アシスタントにより作成

システム表示の作成時間を30%以上短縮

インゴルシュタット(Ingolstadt)のプロジェクトでは、前身のプラットフォームである PC Worx をベースに2004年から開発されてきたブロック規格を、新しいPLCnext Technology 制御技術へと移行しました。この新しい開発の結果、車体部門で必要となる多くのプロセスを最適に制御するための600を超えるブロックがライブラリに含まれています。RFC 4072S PN PLCnext Controlは、IEC 62061 SIL 3およびEN ISO 13849-1 PL e準拠の機械安全もサポートしています。新しいオートメーションプラットフォームは、ウェブ表示により情報の統合と一貫性を向上させることができます。

この目的専用に開発された表示アシスタントが、操作ディスプレイの約98%を自動で生成します。これには、ユーザープログラムから情報にアクセスし、新たに作成されたシステムライブラリの700を超えるアイコンを活用してシステム表示を作成します。これは、従業員が視認できる範囲内のみ操作を許可されているコンベアシステムにも適用されます。ここでは、ジェネレータが各システム部用に個別ユーザ―インターフェースを作成します。この手法によって、所要導入時間を従来の1/3に短縮できました:調整や試運転における非常に大きなメリットとなります。

AUDI PPE社の工場で使用されている産業用PC、背景にロボット

ペデスタルにおいて主制御コンソールおよび二次制御コンソールとして設置されているフエニックス・コンタクトの産業用PC

直接システムにアクセスするためのオペレータ制御ステーション

システム操作に必要となるオペレータ制御ステーションは、非常停止ボタン付きプッシュボタンボックスに内蔵されたスイッチにより、1ギガビットシステムネットワークに柔軟に統合できます。ロボットセルごとのペデスタルには、保護等級IP65のBasiclineシリーズの産業用PCが、主制御盤及び補助制御盤として設置されています。ステップチェーンと診断表示により、操作およびメンテナンス要員はすべての重要情報に直接アクセスできるため、必要に応じて事象に対し迅速に対応できます。コンベア輸送テクノロジで使用されている制御盤は、特別な機能を担っています。eHMI Linuxクライアントは、AUDI社の要望に応じて開発されました。ここで注力したのは、国際規格IEC 62443への適合、およびアップデートとパッチ管理の簡便性でした。これによって、試行および試験済みのメンテナンスプロセスと手順に、産業用PCのメンテナンスを最適に統合することができます。

包括的な安全コンセプトについて話し合うAUDI社とフエニックス・コンタクトの従業員

何より、AUDI社の担当者と共に、包括的なセーフティコンセプトを開発できました

IEC 62443に準拠した包括的な安全コンセプトの開発

センサやカメラ、およびプロセスと品質を確保するためのテクノロジなど、常に増え続ける情報源によって、これまでにない大量のデータが発生しており、結果として不正アクセスから保護しなければならない攻撃ポイントも増えています。このためAudi社は、プロジェクトを常にサイバーセキュリティの観点からも考慮しています。具体的には、IEC 62443-3-3認証取得済みのセキュリティサービスプロバイダとしてのフエニックス・コンタクトとAudi社は、プロジェクトの計画段階からすでに全体的安全のコンセプトを開発しました。このコンセプトでは、IEC 62443-2-4の機能システム要件を実装しています。さらに、脅威分析を使用して製造エリアのセキュリティを向上させるための対策を定義し実施しました。

製造の最適化と使用する関連リソースの持続可能性を実現するには、安全に使用できるデータが必要です。スマート電化、効率的なネットワーキング、オープンオートメーションにより、Audi社は持続可能で将来に対応可能な製造と、機械学習などの新しいテクノロジを柔軟に統合するための基礎を構築しつつあります。

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