アプリケーション例
2025-06-23

現実世界へ飛躍 まずやってみましょう。工場建屋はドイツのブロムベルク(Blomberg)に建てられました。ここでは、高度なDCグリッドにより、製造のエネルギー効率と持続性を向上させられます。舞台裏をのぞくと、直流が実際にどのように機能しているのかが見えてきます。

All Electric Society Factory
工場棟の上に設置されたソーラーパネル

11,000 m²の屋根に設置された2,760枚のソーラーパネル

All Electric Society Factory

ドイツ、ブロムベルク(Blomberg)の晴れた午後 ソーラーパネルの長い列がガラスの海のように11,000 m²の屋根面で波打っています。太陽光が半導体材料に当たると、直ちに電力が流れ始めます。システムの規模を別にすれば、これはドイツにおける多くの屋根においてごく普通に見られる光景です。

しかし、この建物は違います。他の場合はインバータを使用してソーラーシステムからの直流を交流に変換することを確保しますが、ここでの電力は直接現地のDCグリッドに流れます。「DCグリッドは、発電から配電、そして蓄電と消費に至るまでのエネルギーチェーン全体を最適化します」と、フエニックス・コンタクトのDCグリッドのエキスパートであるTobias Lükeが説明します。

このエキスパートは、建物の案内を屋上から始めるのが常です。このソーラーフィールドでは、なぜ直流が広く普及しつつあるのかが明確にわかります。「直流ベースで作動する発電機が増えているだけではなく、エネルギー貯蔵システムや負荷も直流ベースになっています。電気機器や製造ユニットは、いまやほとんどが直流で作動します。」

All Electric Society Factory前のDC充電ステーション

All Electric Society Factory前のDC充電ステーション

ピーク負荷の補償

All Electric Society Factoryの前には、10か所の充電ポイントも用意されています。これらはDCグリッドの世界において重要な役割を果たします。このため、Tobias Lükeは、駐車場までの道のりの案内を務めています。駐車場にはエネルギーディスペンサーが並べられています。「将来的には、社用車は双方向DC充電ステーション(DC = 直流)を使用して、トラクションバッテリーを充電するだけではなく、エネルギーを変換せずに直接システムへ供給することも可能になります」と、Lükeは説明しています。

充電ステーションの内部を見てみると、フエニックス・コンタクトが直流への対応に優れていることがわかります。「過電圧や機器保護、DCサーキットブレーカやDC充電コネクタなどにより、電源モジュールによってエネルギーの流れが最適に制御されています。」

しかし、なにより車両用バッテリーが格段に違います:Tobias Lükeは目立たない白のコンテナを指さしてこう言います。「再生可能エネルギーを基にした安定した電源には、電力の変動を補償するのに十分な大きさと信頼性を備えた貯蔵システムが必要となります」とDCのエキスパートは語ります。

「私たちはこの貯蔵システムを活用し、公共給電ネットワークから電力を取り入れなくてもピーク負荷を補うことができます。」 ピーク負荷は、例えば製造機械の大型の電動モータが起動する際に発生します。この場合、一時的に給電業者との契約電力を上回る電力を消費します。そして、給電業者はこのような場合の消費電力に対して高い金額を請求します。「当社のバッテリーでピーク負荷を補うことにより、電気代を最大80%削減できています。」

DCグリッド用制御盤

DCグリッド用制御盤

考え、操作し、制御する

Tobias Lükeは、建物内の技術用地下スペースに案内してくれます。地下にはDC電源の中枢神経システムが配置されています。壁際に連なる制御盤の数々。これらは、太陽光発電システム、バッテリーストレージシステム、充電ステーションをシステムに統合しているだけではありません。公共グリッドからの電力もここに送り込まれ、余剰があれば返還されます。

「当社の電源モジュールも双方向、つまりどちらの方向でも操作が可能です」とLükeが制御盤を開けながら説明します。中にはモジュールが棚のように並べられています。「モジュール型設計を採用しているため、制御盤を柔軟に組み立てられる上、電源も必要に応じて非常に簡単に拡大・縮小することができます。」

All Electric Society Factory内のDC制御盤

All Electric Society Factory内のDC制御盤

銅の使用量減、節電向上

1回まわすと、制御盤が開きます。赤と白の連なりが生み出す親密な連帯感 – DCグリッドにおける正極と負極。また、ケーブルやその他のコンポーネントが従来の配電システムに比べて大幅に小さいことにもすぐに気づかれると思います。これも、このテクノロジの特長の1つです。「DCグリッドでは、電力伝送に必要となる銅の量も少なくて済みます。高価なこの原材料を、最大55%節約できるのです」とLükeは語ります。太陽光発電システムからの赤と白の列は、制御センターのこの部分で終端を迎えます。これによってDC/DCコンバータ経由でDCバスに合計120 kWの電力を供給します。

DCによる電力は低電圧の主電源分岐により、製造エリアに配電されます。ここでは、DCグリッドからの直接の配電によって照明が作動します。2つの分岐が、製造機械の接続部につながっています。Lükeは、直流のもう1つの重要な特長について次のように説明します。「DCグリッドでは、ロボットや駆動装置のブレーキエネルギーを使用して直接システムにこれを戻すことができます。」 「アプリケーションに応じて、このエネルギー回収だけでも効率を最大20%向上させることができます。」

すべての負荷や貯蔵システムを超えて余剰エネルギーがDCグリッド内で利用できる場合は、グリッドの状態に従い、双方向AC/DCコンバータによってこの電力が公共ACグリッドに送られます。

CONTRACTON ELR HDCミニチュアサーキットブレーカ

CONTRACTON ELR HDCミニチュアサーキットブレーカ

構想が具体化

All Electric Society FactoryでDC負荷を安全に切り替える必要がある場合は常に、ELR HDCミニチュアサーキットブレーカが使用されます。この機器は、保護、切替え、監視、予備充電、ネットワークなどの機能を併せ持っています。特別なDCエネルギーメーターがエネルギーの流れを記録します。DC接続には、ArcZero DCコネクタが使用されています。これによって、負荷状態での電源の接続と切り離しを、アーク放電のない状態で行うことができます。

PLCnext Engineerソフトウェアプラットフォームが負荷管理と上位のDCグリッド管理を担当し、個々のエリアを組み合わせて包括的な1つのシステムを形成します。個々のエリアを組み合わせて包括的システムを形成します。また、このコントローラは、電力取引所における電力価格、気象予報、屋上の測定ステーションからの最新データなども、建物のエネルギー管理システムに統合します。

Tobias Lüke

DCグリッドのエキスパート、Tobias Lüke

言葉だけではなく

ブロムベルク(Blomberg)にあるAll Electric Society Factoryは、ドイツ国内だけでなく、業界全体にその名をとどろかせています。話だけではなく、実演も – 直流は今この場所ですでに作動しています。直流用に設計された製造現場は、毎日そのエネルギーバランスを実証しています。

ただし、Tobias Lükeはこうも付け加えています。「このシステムは、試験目的および運転試験専用に設計されたものです」 このパイロットプロジェクトの考案者たちは全員、さらなる節電と効率の向上を期待しています。その他にも、小型風力タービン、水素生成用の電解槽、そして蓄えた水素から発電する燃料電池の設置が計画されています。

フエニックス・コンタクトは長年にわたりDCテクノロジの調査と確立に携わってきており、Open Direct Current Alliance(ODCA)の創設メンバーでもあります。建物の計画開始当初は、DCテクノロジを活用するためのコンポーネントも規格も、市場にはほとんど出回っていませんでした。しかし現在では、状況は大きく異なるとTobias Lükeは力説します。「コンポーネントが利用できるようになり、法整備も進み、専門知識が増え、エキスパートのパートナー同士の協力が深まったことにより、その他の企業にとってもDCに変更する道を進む価値が生まれています。」

夜が訪れたブロムベルク(Blomberg) このツアーも終わりに近づいています。Tobias Lükeは、おそらくこれまでで最も革新的な工場建屋の一つである場所の扉を閉めます。

夜間のAll Electric Society Factory

ポイント:

直流は日常生活のあらゆる場面にすでに定着しています。しかし、直流のエネルギーを全体として考えると、まさに節電の可能性の宝庫でもあります。All Electric Society Factoryは、この貴重な可能性を引き出すために始動しました。そしてこれは一度限りの試みではなく、他の多くの産業用建物や製造用建物のひな型となるものです。

製造物流や産業において直流システムを導入することは、特に製造現場で使用されるロボットなどの動的負荷に対する節電の大きな可能性を秘めています:ピーク時の性能は最大85%の増加、エネルギー効率は最大20%の向上が見込めます。

一貫して導入すれば、高額な産業用電力という“お化け”もすぐに恐ろしいものではなくなるでしょう。既存のテクノロジで過酷な製造環境にも耐えうるエネルギー源であり、貯蔵施設でもある建物を、今すぐご覧ください。

著者: Phoenix Contact

メールアドレス:

当社のエキスパートとつながりましょう

フエニックス・コンタクト株式会社
フエニックス・コンタクト株式会社
「All Electric Societyやセクターカップリングに関するご相談は、ぜひ当社までお問い合わせください。」

その他の投稿