センサを接続したEthernet APLスイッチのプロトタイプ

APLフィールドスイッチによるセンサのシンプルなイーサネット接続

Ethernet APLとは一体何でしょうか。

APLとは、Advanced Physical Layerの略であり、イーサネットネットワークでの物理的なデータ伝送をさらに発展させたものです。この物理層により、従来は4線式または8線式が必要とされていたイーサネットのデータ交換が、2線式で対応可能になりました。

このテクノロジは、純粋な通信だけでなく、オプションとして、同じペアのワイヤー上の接続機器に電力を供給することも可能です。

したがって、Ethernet APLは、シングルペアイーサネット(SPE)のいくつかの形態の1つであり、センサを直接接続することで、現場の数メートル先までの連続通信を可能にします。

SPEとEthernet APLの違いについて。

SPEテクノロジは、さまざまなデータ伝送速度やケーブル長をサポートするさまざまな規格で構成されているため、さまざまなアプリケーションに適しています。規格10BASE-T1S、10BASE-T1L、100BASE-T1、1000BASE-T1は区別されています。

さまざまなイーサネット規格のデータ伝送速度とケーブル長の比較

Advanced Physical Layerは、IEEE802.3cgの10BASE-T1-L規格とIEC TS 60079-47、2021-03(2-WISE)規格(2-WISE=2線式本質安全イーサネット)を使用し、本質安全防爆を含む防爆仕様に対応しています。したがって、Ethernet APLは、防爆エリアでの使用や、10 Mbpsで最大1,000 mの長距離のブリッジを可能にします。

Ethernet APLの機能

APLテクノロジには次の機能があります:

  • 長距離をブリッジ:幹線長最大1,000 m、支線最大200 m
  • 防爆エリアでの使用が可能(Zone 0、1、2)
  • 異なるメーカーの機器やシステムの相互運用性
  • 膨大な量の追加データ(ビッグデータ)のキャプチャと分析が可能―予知保全などの新たなソリューションを実現することで可用性を向上
  • 既存のケーブル配線やEtherNet/IP™、HART IP、OPC UA、PROFINETなどの実績のあるイーサネットプロトコルを使用することで、コスト効率の高いシステムの最新化を実現。
処理工場と表示されたEthernet APLネットワークの図

処理工場のEthernet APL

Ethernet APLの使用場所

Advanced Physical Layerにより、プロセステクノロジアプリケーションの防爆エリアにある機器やセンサをイーサネットで直接接続可能になります。イーサネットが直接統合されているため、現場からデータにアクセスする場合、複雑なゲートウェイソリューションを必要としません。したがって、Ethernet APLは、プロセスオートメーションにおけるIIoTのための経済的基盤であり、強化要因でもあります。同時に、NAMUR Open Architecture(NOA)やOpen Process Automation規格(O-PAS™)などの新しいコンセプトを可能にします。その結果、次のようなさまざまなユーザーグループがこの新しいテクノロジからメリットを得ることができます。

  • オペレータおよびユーザー
  • 制御システムサプライヤ
  • EPCおよびシステムインテグレータ
  • 機器メーカー

APLネットワークのセットアップ

Ethernet APLは、小規模プラント(製薬工場や化学工場など)とプロセス産業の大規模プラントの両方で使用することができます。幹線と支線のトポロジは、より広い範囲で使用されます。

現場に設置されたEthernet APLスイッチは、防爆エリア(Zone 1および2またはDivision 2)での使用を目的としているため、防爆に関する高い要求はすべて、安全性向上または本質安全性向上の保護等級で満たすことができます。

プロセス産業の大規模なプラント向けのAPLネットワークのセットアップ
電源スイッチ
Ethernet APLは、電源スイッチを使用して制御盤の最上段に接続されています。それにより電力とデータ通信が1つまたは複数の幹線ポートに供給されます。これを実行するために、電源スイッチには外部から電圧が供給されています。
幹線ケーブル
幹線ケーブルは、機器に電力供給するための高電力負荷と、Zone 1のAPLフィールドスイッチ間における最長1,000 mの長いケーブルに対応しています。
フィールドスイッチ
フィールドスイッチには、フィールドデバイスと機器が接続されているAPL支線ポートがあります。Ethernet APLケーブル(幹線)経由または外部から電流を供給することができます。
フィールドデバイス
フィールドスイッチは、通信信号とエネルギーの両方を、支線を介してフィールドデバイスに分配することができます。
支線ケーブル
支線ケーブルは定格電力が低く、オプションでZone 0で最長200 mまで対応可能な本質安全防爆仕様になっています。

さらに、ネットワークのトポロジを柔軟に設計することができるため、コンパクトなレイアウトも実現が可能です。APLスイッチを使用して、APL支線ポートを標準のイーサネットに直接接続することにより、幹線を使用する必要がなくなります。

コンパクトなシステム向けのAPLネットワークの構造
フィールドスイッチ
フィールドスイッチには、フィールドデバイスと機器が接続されているAPL支線ポートがあります。Ethernet APLケーブル(幹線)経由または外部から電流を供給することができます。
支線ケーブル
支線ケーブルは定格電力が低く、オプションでZone 0で最長200 mまで対応可能な本質安全防爆仕様になっています。
フィールドデバイス
フィールドスイッチは、通信信号とエネルギーの両方を、支線を介してフィールドデバイスに分配することができます。
Ethernet APLのロゴ

Ethernet APLのプロジェクトロゴ

当社のEthernet APLに対する取組み

Ethernet APLプロジェクトの範囲内で、フエニックス・コンタクトと他のプロセステクノロジの大手サプライヤは、ユーザーの要件を満たす2線式イーサネットソリューションの実現に取り組んでいます。標準化組織であるPROFIBUS & PROFINET International、FieldComm Group、ODVA、OPC Foundationと協力して、産業パートナーは、プロセスオートメーションで使用するための新たな物理層に基づくオープンスタンダードを確立しています。

フエニックス・コンタクトは、2019年末に開かれたNAMUR総会および2020年2月のARCフォーラムにおいて、デモ機でEthernet APLスイッチの初の実用的なプロトタイプを発表しました。APLプロジェクトパートナーであるABB社、Endress+Hauser社、KROHNE社、SAMSON社が参加したNAMURの設備では、PROFINETプロトコルを使用して、Ethernet APLスイッチとPLCnext Technologyを介してデータをHMIとクラウドに接続しました。ARCフォーラムでは、ABB社と協働し、OPC UAによる接続を実証することができました。

その他の新しい通信技術 フィールドまで一貫性のある通信

OPC UA、TSN、SPE、5Gなどの新しい通信規格が、さまざまな委員会や標準化プロジェクトで現在作成されています。しかしこれらの新しいテクノロジは、それぞれ独立したものとして考えるのではなく、むしろ共に将来の通信を形成していくものです。
工業用通信テクノロジの分野で30年を超える経験を持つテクノロジ大手のフエニックス・コンタクトは、すべての主要な標準化委員会に積極的に参加しています。  これらの委員会で、当社は自動化のための異なるメーカー共通の新しい通信規格の形成を支援しています。

新しい規格の詳細を当社ウェブページでご確認ください。