電気的試験 電気的試験は、主に端子台内の電流に注目します。端子台の最大短絡電流や定格電流での温度上昇などを試験するために、さまざまなシナリオをシミュレーションします。さらに、電気的破壊放電、沿面距離、絶縁特性を試験することで、効率と電気的絶縁を確保するための電圧降下も確認されます。

ねじ端子台の短時間耐電流
電流容量を判定するための試験のセットアップ

PP-H-2,5/5-COMBIコネクタを例とする、電流容量を判定するための試験のセットアップ

コネクタのディレーティング (DIN EN 60512-5-2)

ディレーティング曲線は、部品の電流容量を周囲温度と隣接するコンタクトの関数として表します。コンタクト材料と絶縁ケースに影響されます。プラグイン端子台の電流容量を特定するために、同じ断面積の電線を用いて電気的に直列に接続されたさまざまな極の配置を選択します。ディレーティング曲線の実質的測定のために、プラグイン端子台の電流容量はDIN EN 60512-5-1に準拠して決定されます。ここでは、さまざまな電流を印加し、温度バランスを設定した後に、試験対象物に生じる最大温度上昇が測定されます。絶縁材の上限温度(ここでは常に100°Cと仮定)を考慮に入れると、これらの値は周囲温度に応じたディレーティング曲線、すなわち「基礎曲線」をもたらします。調整された電流容量曲線、「ディレーティング曲線」は、DIN EN 60512-5-2に基づいて生成されます。この規格の通り、許容負荷電流は各ベース電流の0.8倍となります。ディレーティング係数は、コネクタの接触システムの製造公差を考慮に入れています。また、温度測定、測定装置の不確実性も考慮に入れています。フエニックス・コンタクトのプラグイン端子台では、2、5、10、15極配列についてディレーティング曲線が指定されています。

端子台への温度上昇試験

温度上昇試験

温度上昇試験 (IEC 60947-7-1/2およびUL 1059)

ジュール効果による端子台の温度上昇はできる限り最小値に保たなければなりません。したがって、接触抵抗はできるだけ低くしなければなりません。この試験では、試験用電流にさらされている間に室温で起こる温度上昇を記録します。

IEC 60947-7-1/-2
ここでは、5つの端子台がレールに水平に取り付けられ、定格断面積の長さ1 mまたは2 mの導体ループを使用して直列に接続されます。端子台は、定格断面積の電流容量と同程度の試験用電流にさらされます。中央の端子台の温度上昇が記録されます。室内温度が約+20°Cであると仮定すると、端子台に最大45 K(ケルビン)の温度上昇が許容されます。さらに、端子台に対して電圧降下試験を実行する必要があります。

UL 1059
このプロセスは基本的にIEC試験に対応しており、電線の長さだけが異なります。UL 1059では、3つの端子台が互いに隣接して水平に取り付けられています。測定は周囲温度25°Cで行われ、最大30Kの温度上昇(可能な限り接続ポイント付近で測定)が許容されます。フエニックス・コンタクトの端子台に使用されるのが高品質の接点材料のため、すべての接続テクノロジにより、指定された規格よりも低い温度上昇値になります。高品質銅材料と信頼性の高い接触遷移により、端子台の低接触抵抗を保証します。

商用周波耐電圧による絶縁試験 (IEC 60947-7-1/2およびUL 1059)

この電気的試験は、適切な沿面距離を実証するために使用されています。隣接する2台の端子台の電位間および端子台とDINレール間の距離が十分であることを試験するために、適切な試験電圧が印加されます。定義:定格絶縁電圧(Ui)とはRMS、または正しく使用された場合に最大値として恒久的に許容されるDC電圧値です。試験用電圧は60秒間維持されます。表に示されている数値は、基礎として使用されます。

IEC 60947-7-1/-2
試験中はスパークオーバーや破裂放電がおきてはいけません。沿面放電電流は100 mA以下に留める必要があります。

UL 1059
試験電圧 = 1000 V + 定格絶縁電圧 Ui x 2。定格絶縁電圧800 Vのフエニックス・コンタクトの端子台は、一貫して2,000V~で絶縁試験に合格します。

絶縁試験の試験値

次の表に絶縁試験の試験値を示します。ここでは、試験電圧は定格絶縁電圧に割り当てられます。

試験電圧(実効)[V]

定格絶縁電圧Ui [V]
Ui <= 60 1000
60 < Ui <= 300 1500
300 < Ui <= 690 1890
690 < Ui <= 800 2000
800 < Ui <= 1000 2200
1000 < Ui <= 1500
Push-in端子台に対する短時間耐電流試験

極端な過負荷状態であっても高い接触信頼性

短時間耐電流 (IEC 60947-7-1/-2)

端子台は、関連する安全機器が電流を切断するまで、損傷なく実際に短絡電流に耐える必要があります。これには数十分の一秒かかることがあり、定格電流の数倍になることがあります。試験目的のために、端子台が支持部に取り付けられ、定格断面積の電線に配線されます。保護電線端子台は、定格断面積120 A/mm²の電流密度に対してそれぞれ1秒の三段階で処理されます。試験後、個々の部品に損傷がなく、まだ使用できる場合に、要件が満たされます。試験の前後に、端子台は電圧降下試験に合格しなければなりません。試験の前後の電圧降下は、端子台毎に3.2 mVを超えてはならず、また試験前に測定される値の1.5倍を超えてはいけません。フエニックス・コンタクトの240 mm²大電流用端子台の場合、28,800 Aの試験用電流が品質を損なわずに1秒間端子台を通過します。

図面に基づく沿面距離

沿面距離

空間距離と沿面距離 (IEC 60664-1)

空気距離および沿面距離の寸法検査を実施することにより、電気的絶縁特性が以下の点に関して適切であることが確認できます。

  • 設計
  • 予期される汚染
  • 予期される周囲条件

最短距離を考慮して、距離は2つの隣接する端子台間と帯電金属部品と支持体との間で測定することにより確認できます。これには、空間距離としての空気と沿面距離としての表面に沿った距離の分離を考慮することが含まれます。最短距離はIEC 60947-1で定義されています。

空間距離に関しては次のことを意味します。
2つの電位間の、空気を介した2つの導電部の最短直線距離です。最小空間距離値を測定するための決定要因は、端子台の定格サージ電圧、過電圧カテゴリ、予期される汚染度です。定格サージ電圧は、過電圧カテゴリに関する中性線電圧から導出されます。他に文書に記載がなければ、端子台には過電圧カテゴリIIIが使用されます。カテゴリは、固定設備の機器を対象とし、製品の信頼性および可用性に関する特殊要件がある場合を想定しています。関連する空間距離は、IEC 60664-1の表2(抜粋)に記載されています。ここでの追加仕様は、アプリケーションの一般的に均一でないフィールドと、汚染度3(導電性の汚染の発生またはIEC 60664-1、表2:結露が予想されるため導電性になる非導電性汚染)です。

沿面距離に関しては次のことを意味します。
2つの電位間の、隔離表面に沿った2つの導電部の最短直線距離です。DCまたはAC電圧システムのRMS値(電線から電線、電線から接地、電線から中性線)は、最短沿面距離を判断するのに決定的です。IEC 60664-1の表3aおよび3bを参照してください。IEC 60664-1の表4は、端子台の電圧のRMS値、汚染度(3)、絶縁材料グループ(I)の関係を示します。

過電圧カテゴリ

各中性線電圧に割り当てられる過電圧カテゴリ

過電圧カテゴリI

過電圧カテゴリII

過電圧カテゴリIII

過電圧カテゴリIV

中性線電圧[V]
300 1500 V 2500 V 4000 V 6000 V
600 2500 V 4000 V 6000 V 8000 V
1000 4000 V 6000 V 8000 V 12000 V

条件Aに従う汚染度:不均一なフィールド

表で、汚染度は必要なインパルス耐電圧に割り当てられています。条件Aに従う汚染度:不均一なフィールドが適用されます。

汚染度1

汚染度2

汚染度3

必要なインパルス耐電圧
4000 V 3.0 mm 3.0 mm 3.0 mm
5000 V 4.0 mm 4.0 mm 4.0 mm
6000 V 5.5 mm 5.5 mm 5.5 mm
8000 V 8.0 mm 8.0 mm 8.0 mm

汚染度3の絶縁材質グループ

表で、汚染度3の絶縁材質グループが電圧のRMS値に割り当てられています。

絶縁材質グループI

絶縁材質グループII

絶縁材質グループIII

電圧RMS値
500 V 6.3 mm 7.1 mm 8.0 mm
630 V 8.0 mm 9.0 mm 10.0 mm
800 V 10.0 mm 11.0 mm 12.5 mm
1000 V 12.5 mm 14.0 mm 16.0 mm

空間距離と沿面距離 (UL 1059)

UL 1059は、空間距離と沿面距離の割り当てに、異なるアプローチをとります。空間距離と沿面距離の定義は物理的には同じですが、ここでは独立した距離と、使用グループおよび電圧範囲に従った割り当ての、独立した表が適用されます。この場合、使用グループCはデフォルト設定に関係しています。

空間距離 (UL 1059)

絶縁されていない電位間の空間距離(インチ、ミリメートル)

アプリケーション

定格電圧

空間距離(インチ)

空間距離(mm)

使用グループ
A 操作エレメント、制御盤、サービス機器など 51 V~150 V 1/2 12.7
A 151 V~300 V 3/4 19.1
A 301 V~600 V 1 25.4
B オフィスや電子データ処理の機器を含む、市場で入手可能な機器 51 V~150 V 1/16 1.6
B 151 V~300 V 3/32 2.4
B 301 V~600 V 3/8 9.5
C 産業用アプリケーション、無制限 51 V~150 V 1/8 3.2
C 151 V~300 V 1/4 6.4
C 301 V~600 V 3/8 9.5
D 産業用アプリケーション、定格制限のある操作機器 151 V~300 V(10A) 1/16 1.6
D 301 V~600 V(5A) 3/16 4.8
E 定格電圧601 V~1500 Vの端子台 601 V~1000 V 0.55 14.0
E 1001 V~1500 V 0.70 17.8
F スペースへの別のアプローチによる産業用機器の使用 51 V~1500 V 評価による決定 評価による決定
G LED照明 51 V~300 V 1/16 1.6
G 301 V~600 V 1/16–3/16 1.6–4.8

沿面距離 (UL 1059)

絶縁されていない電位間の沿面距離(インチ、ミリメートル)

アプリケーション

定格電圧

沿面距離(インチ)

*沿面距離(mm)

使用グループ
A 操作エレメント、制御盤、サービス機器など 51 V~150 V 3/4 19.1
A 151 V~300 V 1-1/4 31.8
A 301 V~600 V 2 50.8
B オフィスや電子データ処理の機器を含む、市場で入手可能な機器 151 V~300 V 1/16 1.6
B 51 V~150 V 3/32 2.4
B 301 V~600 V 1/2 12.7
C 産業用アプリケーション、無制限 51 V~150 V 1/4 6.4
C 151 V~300 V 3/8 9.5
C 301 V~600 V 1/2 12.7
D 産業用アプリケーション、定格制限のある操作機器151 151 V~300 V 1/8 3.2
D 301 V~600 V 3/8 9.5
E 定格電圧601 V~1500 Vの端子台 601 V~1000 V 0.85 21.6
E 1001 V~1500 V 1.20 30.5
F スペースへの別のアプローチを使用する産業用機器 51 V~1500 V 評価による決定 評価による決定
G LED照明 51 V~300 V 1/8 3.2
G 301 V~600 V 1/8–3/8 3.2–9.5
SCCR定格向けの高電圧ラボ

高電圧ラボ

SCCR定格 (NECおよびUL 508A)

2006年4月以降、米国電気工事規程(NEC:National Electrical Code)は、産業用コントローラの短絡電流定格を規定するよう要求しています。これらのSCCR(短絡電流定格)値は、UL 508Aを使用して算出することができます。米国では、すべての主回路用および制御電圧供給の電源入力用に、すべての産業用開閉装置の定格プレート上で計算を要約して記載する必要があります。指定されていない部品の標準値は、UL 508A―表SB 4.1に記載されています。モジュール端子台には標準値10 kAが指定されています。このSCCR値は、定格電圧の仕様の下でのシステムまたはコンポーネントの短絡定格電流を記述しています。これは、使用を妨げる、または危険な取扱いにつながるような重大な損傷につながらない、最大許容対象故障電流です。完全なシステム側では、このSCCR値は関連する分電または給電回路内の最も弱いコンポーネントに基づくものです。ULファイルXCFR2_ E60425では、CLIPLINE completeシステム内の端子台はすべて100 kAのSCCR値を有するものとして記録されています。測定SCCR値が高い高性能なシステムを作成するのに役立ちます。

より高く文書化されているコンポーネントを設置することが出来ない回路では、上流の対応する高電流ヒューズ端子台に接続することで、回路全体の定格を上げることができます。ヒューズ端子台UK 10,3-CC HESI Nにより、下流の回路のSCCRを200 kAにあげることができます。

試験セットアップ:電圧降下試験

試験セットアップ:電圧降下試験

電圧降下試験 (IEC 61984)

端子台の各接続ポイントには、接続テクノロジに応じて1本または複数の電線が接続されています。電流伝送は、電線と電流バー間の電気抵抗に強く影響されます。高品質の接点により気密接続が実現されます。これにより、長期的に確実な接続を保証します。したがって、この電気的試験は端子台(2つの接続ポイント)上での電圧降下を特定し、そこから接触抵抗と接触品質に関する結論を導くことができます。端子台は定格断面で配線されます。測定のために、定格断面積の電流容量の0.1倍に相当する直接試験電流が端子台に印加されます。電圧降下は、接続ポイントの中央から10 mm以下の距離でピックオフされます(図参照)。室温が約20°Cの場合、試験前後で端子台毎に3.2 mVを超えてはならず、また試験開始時に測定される値の1.5倍を超えてはいけません。フエニックス・コンタクトの端子台は、規格で要求される限界値を最大60%下回ります。

電圧降下試験

電圧降下試験の試験値

電流容量[A]

定格断面積 AWG

電流容量[A]

定格断面積[mm²]
0.2 4 24 4
0.5 6 20 8
0.75 9 18 10
1 13.5 - -
1.5 17.5 16 16
2.5 24 14 22
4 32 12 29
6 41 10 38
10 57 8 50
16 76 6 67
35 125 2 121
50 150 0 162
95 232 0000 217
150 309 00000 309
240 415 500 MCM 415

挿入回数 (IEC 61984)

IEC 61984では、電力範囲50 V~1,000 V、電流容量最高500 Aのコネクタ向けの完全な試験シナリオを提供しています。この目的で、設計保護特性(IPクラスなど)ならびに機械的および電気的特性が分類され、アプリケーションに応じて指定されます。グループA~Eでチェックされます(表を参照)。耐久試験としての挿抜回数を示すことは、試験グループAの重要な表明です。スイッチング容量のないコネクタ(COC)と、スイッチング容量あり(CBC)の推奨サイクルは、10、50、100、500、1,000、5,000です。スイッチング容量の試験では、毎分3~4回の挿抜サイクルを完了します。速度は0.8 ±0.1 m/sに設定されます。試験後、将来の使用を妨げるような損傷が生じないことを保証しなければなりません。これには腐食保護層の目視検査と電圧降下試験が含まれます。CLIPLINE complete COMBIシリーズの端子台とオスコネクタは、一般に100回の挿抜サイクルで認定されています。

試験グループB

試験グループC

試験グループD

試験グループE

試験グループA
機械的試験 耐久試験 温度試験 環境試験 保護等級試験
サージ電圧試験中のサージ電圧パルスの時間的経過の図

電圧サージパルスの時間曲線

サージ電圧試験 (IEC 60947-7-1/2)

サージ電圧試験を使用して、2つの隣接する電位間の十分な空間距離が立証されます。試験は、定格絶縁電圧に応じてすべての極性に対してサージ電圧で5回行われます。このプロセスの時間間隔は、少なくとも1秒です。隣接する端子台間または端子台とレール間の距離が検証されます。試験中に意図しないスパークオーバーが発生してはいけません。フエニックス・コンタクトの端子台用の定格サージ電圧は、IEC 60664に準拠の6~8 kVです。それぞれの高さは定格電圧から導出されます。これにより、端子台の動作電圧の動作安全性が有効に確認されます。過電圧カテゴリ4のカテゴリIIIがデフォルト設定です。

サージ電圧表

過電圧カテゴリ4のカテゴリIIIがデフォルト設定です。

IEC 60038(単相)に基づく電源システム(主電源)の定格電圧[V]

合計AC定格電圧またはDC定格電圧から導出される電線-中性線電圧[V]

定格サージ電圧[V]

IEC 60038(三相)に基づく電源システム(主電源)の定格電圧
- 120–240 50 800
- 120–240 100 1500
- 120–240 150 2500
230/400 | 277/480 120–240 300 4000
400/690 120–240 600 6000
1000 120–240 1000 8000
優れた接続方式―CLIPLINE complete
カタログ

フエニックス・コンタクトの端子台は、通常の端子台規格の要件を超えるさまざまな試験と規格の対象となります。適切なデザイン手段の実現と高品質素材の使用で、端子台は規格の要件を大きく超えることができます。

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